最高裁判所第三小法廷 昭和42年(オ)1370号 判決 1968年5月28日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人祝部啓一の上告状記載の上告理由第一、二点について。
論旨は、抽象的に原審の訴訟手続に法令違背があることとその事実認定に経験則違背があることを指摘するにとどまり、具体的な訴訟手続違背の事実および経験則違背の趣旨について示すところがないから、不適式であり、排斥を免れない。
上告代理人加賀竜夫の上告理由書記載の上告理由について。
記録に徴すると、所論原審における第一回口答弁論期日(昭和四二年五月一〇日)には、控訴人およびその訴訟代理人は出頭せず、被控訴代理人は出頭したこと、および右期日の口頭弁論調書には、被控訴代理人の陳述として「原判決事実摘示のとおり原審口頭弁論の結果陳述」との記載があることは所論のとおりである。しかし、民訴法三七七条二項にいう口頭弁論の結果には原審における証拠調の結果を含み、また、当事者の一方が口頭弁論期日に欠席したときは、出頭した方の当事者に双方かかる第一審口頭弁論の結果を陳述させることができるものであるから(当裁判所昭和二七年(オ)第五七九号・同二九年一〇月二九日第二小法廷判決・裁判集民事一六号三三三頁、同昭和三二年(オ)第一二二号・同三三年七月二二日第三小法廷判決・民集一二巻一二号一八一七頁参照)、右の調書は、被控訴代理人において当事者双方にかかり、かつ証拠調の結果をも含む第一審口頭弁論の結果を陳述した趣旨を記載したものと解するのが相当であり、被控訴代理人は、その記載にそう陳述をしたものと認めるべきである。されば、原審が上告人提出の証拠資料を斟酌していないとする所論は、その前提を欠くものであつて、採用するに足りない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)